「アルパ三十六弦」 それは、日常のたわいもない事柄を取り上げたショートエッセイ。
ちょこっと本当の、ちょこっと作り話の「アルパ三十六弦」。

2012年8月から2年をかけて、連載して参りました。又、皆さまの熱い?リクエストにより、「続・アルパ三十六弦」もスタートいたしました。 このエッセイを通して、私の心の内が少しでも皆様に伝わりましたら、幸いです。
初めてエッセイを読まれる方は、どうぞ「アルパ三十六弦 一話(一番下)」からご覧ください。

 


続アルパ三十六弦 第十一話
「2020の夏の朝の状況」

まだ私、夢見ている夏の早朝。

いつもの朝の散歩に、定点観測の写メを送ってくれる彼のラインの着信音で、一回目の目覚め。
彼は、朝の散歩の風景を、休憩拠点にある、今時の洒落たカフェから、少し気取った都会生活の一コマとして、朝食の写メを送ってくれます。
そんな夏の、朝のラインでのやりとり。

問い)
「あれ?今日の定番のブリオッシュはパスですか?」

答え)
昨日は、ライブ配信用に最新のVLOGにワイヤレスを繋いで、これまた人気絶頂のMITE miniに接続、なんと2lineをスイッチしてユーチューブにライブ配信する環境構築をシェアオフィスの会議室でテストしていました。
Wi-fiの速度が足りているか心配でしたが、なんとか、やりました。
あまりに忙しかったので、Uberでモスのクラシックなバウンズを食べながらの作業で、その合間にZoomでN氏とリモートで打ち合わせ、ながらの作業でバタバタして、流石に体調を崩しそうでしたから、今日は朝から散歩して、休憩時のデニッシュはお休み。少しデトックスしなきゃ~。」


現実と夢の狭間で、私は必死に何か言葉を入力しようとしましたが、気が付くと、ひとりでに指がスーっとスマホの上で動いてしまい、なかなか正しい文字が入力できません。
すると、ラインの着信音・・・。

「朝の散歩とはいえ、何かピリピリの同調圧力、東京は連日400人アップだから、誰もいない散歩路でもディスタンスを保ちながら、熱中症に気遣い、フェースシールドを付けたり外したり。

そうそう、いつものカフェ、先日感染者が一人でたような、でもインストールしたCocoaでは黄色が出なくて、濃厚接触にならなかったのでセーフ。
でも、来週は地方に行くからPCRを事前に受けて、陰性だったら行こうかな?
そっちは、相変わらず無観客のビデオ公演だってね~、持続支援金も出たけど、もうとっくに底をついたしね。
先行き難しいけど、イギリスのゼネカから3000万回が年末に届くから、来年は、白昼夢やれそうだね~

ところで、質問は何だったっけ?」


朝からの、しかも、私にとっては、超ド朝の7時からのハイテンションなライン会話に頭も身体もついていけず。
でてくる単語も理解できずに、自分が何を質問したかも、チンプンカンプン。
ただ、嬉しいことに最後の白昼夢のくだりは、はっきり認識したので、反射的に「是非~」とやっと伝えて、白昼夢を見ながらの2度寝に入りました。


2020の夏、まさに白昼夢。

 

 

続アルパ三十六弦 第十話
「はじめてのおつかい」

「はじめてのおつかい」というテレビ番組がありますね。
確か原作は、子供向けの絵本だったと思いますが・・・。
まだ幼稚園にも上がっていないような小さな子が、初めて親からお金を渡されて、お店に買い物に行くお話です。テレビスタッフがその光景をやきもきしながら撮影し、お母さんが心配そうにわが子の帰りを家で待っている、そんな内容の番組です。
誰しも初めてのおつかいは、ドキドキしますよね。


さて、とある都会のマンションの一室での事。
彼と、「今日は、take outで夕飯を食べようよ。」という話になり、近所の中華屋さんの天津丼をまず電話で注文。そして20分後に私がひとりで取りに行くことに相成りました。
実は私、take outで夕飯を買うなんて、はじめての事で、少しドキドキしていました。

中華屋さんの店内に入ると、中年の男性のお客様がひとり、カウンターで黙食中でした。
私は、厨房の中にいた店主に声をかけました。
「すみません、すみません」
しかし、眼鏡をおでこにあげながら懸命にスマホを眺め、メールかラインでの注文に対応していた店主は、私が入ってきたことには気が付かないご様子。

「すみませ~ん、すみませ~ん。」もう一度、少し大きめに声をかけると、奥から奥様がでてきて、私に気が付きました。
「倉品さま、はい、天津丼できていますよ。」

天津丼、ゲット!!
ウーバーイーツさながら心の中では、「私にもできる――!」と、少し自慢。

そして、いそいそと、その“物”を受け取りにいこうと、レジの方にくるっと向きを変えたその瞬間でした。
いつもなら、あるはずのない場所に置かれた感染予防のアクリル板に、なんと私の腕がぶつかりました。

「アッ」思わず私は声をあげました。

時すでに遅し・・・。
あレ―――ッ
アクリル板が倒れ、そのアクリル板にぶつかった箸たても倒れました。
負のドミノ現象のはじまり~

すると、まるでスローモーションのように、たくさんの箸と割りばしが油まみれの床に飛び散りました。
「ガッシャーーーン」

アチャーーー。
一瞬の静けさ。気まずさ・・・


大惨事を招いてしまった私は、お店やお客様への申し訳なさと恥ずかしさ。
で、穴があったら入りたい。

「いいですよ、気にしないで、後はやりますから」と、救いのお言葉。
奥様は優しい言葉で、散らばった箸を拾っている私に声をかけてくれました。

ご主人は、怒っているだろうか。いや、確かに怒っている。ちらっとご主人に眼をやると、んー、口がへの字になっているような気がしました。
私は、何度も謝り、お会計を済ませ、そそくさにお店を後にしました━

私は内心気落ちしながら、しかし熱々の天津丼を手に帰宅し、一部始終を彼に話しました。

「もう恥ずかしくて、あのお店にいけません。」半べそをかきながら言う私に、
「気にしない、気にしない。ドンマーイ、ドントウォーリー!
それよりせっかくの天津丼、温かいうちに食べようよ。」と彼。

はじめてのおつかいの、はじめてのtake outの天津丼は、彼の優しさが一味加わり、忘れがたい味となりました。

「あ~美味しかった!」

すると、
「後で、コンビニでバドワイザーを2缶買って、おやじに渡しにいったら?」という彼の提案。
「同意」と私。

バドワイザーを2缶買って、先ほどのお詫びと天津丼が美味しかったことも添えて、ひとりで店を訪ねました。
相変わらずスマホで注文に対応していたご主人は、初めなかなか受け取りませんでしたが、バドワイザーをちらっと見たその口元は、あきらかに緩んでいました。

私のはじめてのおつかい・・・。

2021.9.18 K.maki-co

 


続アルパ三十六弦 第九話
「私のソーシャルディスタンス」


2年前、黒ひょうの素敵な傘を購入しました。
北欧のアクセサリー作家による、1点もののお洒落なデザイン。華の銀座の専門店で見つけました。
その傘を使うようになってから、ひとり歩きでは少し怖い夜道も、私の頭上で黒ひょうが鋭く目を光らせて、守ってくれていたのでした。

そんなある日、東中野のタップスタジオのお稽古の帰りでした。駅で立ち寄ったWCに、なんとその傘を置き忘れてしまったのです。すぐに引き返しましたが、一瞬のすきにあっさりと黒ひょうは持ち去られてしまいました。
ショックが大きく、その後なかなか次の傘を選べずにいましたが、何を思ったのか突然に、私は銀座へと足早に向かいました。
大のお気に入りの傘を見つけたあの銀座有名デパートの傘売り場。

しかし、残念ながら、既に季節が変わり、傘コーナーは縮小展開になっていました。
ガッカリしていたその時に、コーナーの片隅からひと際目立ってこちらに気配を伺っている傘。

そして、早速、ハウスマヌカンが銀座高級店ならではの丁寧な説明をしてくれました。
その説明によると、なんと、そのお傘は、御フランス製の有名傘専門店の人気の傘の復刻版だとか。

御フランス製。しかも老舗の傘の専門店。復刻版。
心は夢心地~!オーマイガッ!!

それは、大きなドーム型の鳥かご模様のクリーム色の素敵な傘でした。
とてもとても素敵だけれど、小さな私には、少し大きすぎるかしら。傘だけが目立ってしまうかも?
っと、なかなか決心できずにおりました。

すると、壁の横のポスターに、


「大きな日傘で新しいソーシャルディスタンスの提案!」の文字。


なるほど、それは今で言う、とてもオシャレなフランス製の高級フェイスシールドか?
なんだか「ピンポン!」とひらめき、その御フランス様は、今は我が家に、私の黒ひょう様の次の愛用の傘になりました。

黒ひょうは、夜道、怪しい人から私を守ってくれたけれど、御フランス様は、コロナから私を守ってくれています。

でも、やっぱり少し大きすぎないですか?

2020.8.5 K.maki-co



続アルパ三十六弦 第八話
「チタンのチカラ」  


職業柄、慢性の腰痛、肩凝りなどに悩んでいる私。そんな私が、とても頼りにしている10円玉大の丸いテープ、ご存知ですか?
そう、チタンテープです。

中央線の中野駅から徒歩5分に所在する、とある治療院。月に1回、演奏で傷んだ私の身体全体に貼られる魔法の円形テープ。
施術後は、あまりに丸いテープが身体中に貼られるので、まるで蛇女状態。
しかし、しかし、これがなんとも、絶大効果!なのです。
さて、私、今朝は夢にうなされて、油汗かいて、目が覚めました。なんだかとても気持ち悪い夢でしたが、夢の内容は目覚めと共に、忘れていました。

気を取り直し、朝から発声練習。
その後、歌のお稽古。っと、その時に・・・、
あっ、悪夢の内容を突然、思い出しました。
「星めぐりの歌」。この曲を歌っていた時です。

 ♪赤い目玉のさそり、ひろげた鷲のつばさ・・・

さそりが私の背中にはりついていた、あの悪夢のぞくぞく感が甦ってきました。

それで、おもむろに自室に戻り、セミヌードになり、三面鏡を使って背中を見たら、なんと!背中のチタンテープが、さそり座の星座配置で貼られていました。

ありがたや~、恐ろしや~チタンのチカラ。

2020.5.15 K.maki-co




続アルパ三十六弦 第七話 
「桜咲く」


「あ、ここって、もしかして」
私は、突然、桜の街路樹を走るクルマの助手席で声をあげた。

ここは昨年の11月、新しい元号の天皇陛下即位祝賀パレードを観にいった場所。ふとその光景を思い出した時のことだ。

赤坂御所近くの「権田原交差点」から程近い、そこは1ブロック奥の神宮外苑の通り。ものすごいひとだかりの中、私たちは、即位の車列を遠くの人垣のわずかな隙間から垣間見える場所に陣取り、その瞬間を今か今かと待っていた。
しかし、結局その場所からは、車の姿も車列の音も聞こえてこない。はるか遠くから自衛隊の音楽隊の歓迎演奏と沿道に群がる群衆から波のように起き上がる大歓声は聞こえてはきたが、期待していた車列の音も天皇陛下の御姿も全く見えずパレードはあっけなく終わってしまった。

なんだか腑に落ちない気持ちではあったが、その場はテレビからは感じられない、祝賀気分のおびただしい群衆の中、ところどこで見えない車列の方向に向かって繰返される万歳の声。滅多に味わえないリアル感覚。新しい時代を目撃している証人の一人として、大勢の中でわくわくしながら迎える高揚感。独特な雰囲気を存分に生で味わうことができた。

群衆の背後には、新しく建設された国立競技場も見事に完成し、来るべき2020東京オリンピックに向け着々と準備が進む大都会東京が青空の下に広がっていた。明るい未来、まさにその真っ只中だ。


2 0 2 0 、約束された希望の年が明けて間もなく、コロナ「王冠」という聴き慣れないウイルスが瞬く間に世界に広まった。世界中が得体の知れない恐怖に包まれ、様々な活動が急停止した。東京オリンピックもまさかの延期。そして私の演奏活動もたちまち自粛そして停止。予定されたコンサートもことごとく中止や延期に追い込まれている。そして私の生業である演奏の仕事がなくなった。
世界中で経済や人の流れが止まり、見えないウイルスに対する恐怖と不安な気持ちが漂っている。
一瞬にして、世の中が一変した。

ふと、見上げると、ライトアップされた桜が咲いていた。
こんなに世の中は、変わってしまったけれど、桜は今年も変わらずに咲いている。

「あ、私、この季節好きだったんだ」走るクルマの中でふとつぶやいた。

2020 4 3 K.maki-co




続アルパ三十六弦 第六話
「光陰矢の如し」


ある朝の事、38年ぶりに井上陽水のライブを堪能した、という、少し年の離れた知人からメールがやってきた。その50周年記念コンサートのタイトルは、「光陰矢の如し~少年老い易く 学成り難し~」
井上陽水もなんと古稀を迎えたという。半世紀に渡って精力的に音楽活動を行うそのパワーは、一体どこから来るのだろう。私の未来にもそんな精力的なシーンが来るのだろうか?

そんな事を考えながら、いつもの喫茶店で彼と過ごしていたら、荒井由美(これまた大御所)の曲が、店のラジオから流れてきた。
見知らぬ曲だった。タイトルを彼に訊ねてみた。
コバルトアワーのアルバムの曲で「コウカイニッシ」という。

私はそのタイトルを聴いて、頭の中で「コウカイニッシ」変換=「公開日誌」=ブログ。
「今でいうブログだね」っと答えた。

彼曰く、いやいや、「コウカイニッシ」=「航海日誌」、これが正解!


今エッセイを書いているのは、4月30日から5月1日になるちょうど0時を回ったところだ。
新しい元号「令和」のスタート。
平成よ、さようなら。令和よ、初めまして!

毎日の1日1日を前向きに生きていこう。決して「コウカイニッシ」=「後悔日誌」にならぬように。

少年老いやすく 学成り難し 一寸の光陰軽んずべからず


訳)儒者朱熹の詩句から。
若いうちは、先がながいものだと思っているが、すぐに歳をとってしまうもの。
学問は容易に修め難いものであるから、若いうちから時間を惜しんで、勉学に励むべきだ。
わずかな時間も無駄にしてはならない。

2019.5.1 K.maki-co

かつての私。。



続アルパ三十六弦 第五話
「ヒカリの階段 どこまで続く、秋の空」


「人は誰しも当たり前ですが、生まれた日があり、そこから人生が始まります。
その日から、それぞれの自分の可能性を求めて、夢のような日常を過ごしているのではないでしょうか?」
私はこの頃、演奏会の中で、このフレーズを多用しています。


1日のうちで、家の周りを歩いていたら、何気ない風景が突然、奇跡のように美しく感じることがありませんか?
平凡な日常の中でも、実は一瞬一瞬が奇跡の連続なのに、それを見逃し、ありふれた退屈な1日にしてしまうのは、とても残念なことですよね。


先日、女優の樹木希林さんの訃報を耳にしました。
それからある新聞での投稿に樹木希林さんのコメントが書かれていました。

曰く、とりわけ是枝裕和監督作品では、日常のドラマを演じながら、人間のいとおしさ、かなしさ、毒やおかしみをしのばせて鮮やかに体現してみせた。しかもこれみよがしではなく、何気ない風情で。
その味わいは唯一無二のものだったが、取材でそうした話になると「私は基本が日常を描くっていう役者人生だったから」。たんたんとしていた。


多分、樹木希林さんは、毎日流れていく何気ない日常に愛おしさやすばらしさに気づき、感じていたのですね。
私がこの頃使っている「フレーズ」の私の気持ちと同じスタンスだなと思いました。
重い病気の全てを受け入れながら、最後の最後まで奇跡のような日常を描き、表現して生き抜いた樹木希林さんに心からご冥福をお祈り申し上げます。


田舎道 ヒカリ階段 現れた
どこまで続く この秋の空


岩手花巻の田園で、太陽が沈む前のほんの一瞬に、奇跡の1枚が撮れました。
さぁ、可能性を求めて、ヒカリの階段を一段一段上っていきますよ!!

2018.9.27 K.maki-co


続アルパ三十六弦 第四話
「気合い・精進」


私は、10年程前から、アルパのお稽古部屋や私の寝室の目のつく所に、当面の目標やら、心構えの標語を書いて貼っております。

例えば、「気合い・精進」、「今が本番」、「継続は力なり」 ―。
毎日、それらを目にして、ひとり気合いを入れて過ごしておりました。

さて、話は変わりますが、
先日、オーガニックコンサートでいただいた人参30キロとホウレン草10キロを、翌日のコンサートのお客様にお土産として配るため、父と母と三人で、夜遅くまで、てんやわんやでバタバタと小分け作業をしておりました。

そして、やっとのことで準備を終えて、迎えたコンサートの朝。
相方の音楽仲間がリハサールにやってきました。そして、私は当日の準備もあり、とりあえず2階のお稽古部屋に上がってもらいました。
しばらくして、私も2階へ上がりました。
すると、いつもは閉めてある私の寝室の襖が、なんと半分以上開いているではありませんか!!

"ギョ、ギョ、ギョエー!!”


客人を2階に案内する時は、必ず閉めておくはずの襖です。
そ、それがです。開いていたのでした。
しかもよりによって、その日は余裕がなく、布団はでんぐり返しのぐちゃぐちゃ、パンフレットなどのダンボール箱なども、そこら中バラバラと置いてある始末。

相方に今まで一度も見せたことがない寝室を見られてしまった。しかもこの状態を・・・。

しかし、私は落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせるように、
「あれ~寝室のドア、開いていたみたい」っと、さらっと言ってのけ、冷静さを装い、コンサートのリハーサルが始まりました。


その寝室には、目の前のベッドの真上に大きな標語が貼っております。

「気を抜かない」

この標語が、相方にどう映ったか・・・。
気を抜いてしまった、とても恥ずかしい経験でした。


さて、今度、きれいに整頓されている時に、襖を少し開けておこっかな~。

2018.4.9 K.maki-co



続アルパ三十六弦 第三話
「さいたま産」


先日、オリジナルの新曲にタンゴの曲が出来上がり、レコーディングが決まりました。そして、バイオリンのSさんに曲を紹介した時のことです。

「この曲は、タンゴのリズムをイメージして作曲しました!」っと、私。
すると、Sさん曰く、
「ん?アルゼンチンタンゴ?・・・ん?それともコンチネンタルタンゴ?どちらをイメージしたのかしら??」っと、つっこまれてしまいました。

しかし、よく違いが分からない私でしたので、
「なんとなくコンチネンタル?ひょっとしてアルゼンチン?」などと答えてしまいました。

後日、とても気になったのでインターネットで調べてみました。


「アルゼンチンタンゴ」は、19世紀の終わり、都会の港町ブエノスアイレスの裏町で生まれる。貧富の差が進み、貧しい労働者は過酷な労働を強いられる環境の中で、カオスの中から生まれた音楽。タンゴの主役楽器は、バンドネオン、そしてギター伴奏。

「コンチネンタルタンゴ」は、20世紀初頭から半ば、アルゼンチンタンゴがヨーロッパに渡り、上品にブルジョア風に変化したもの。指揮者が立ち、クラシックに近く、バイオリン、ピアノ、コントラバス、アコーディオンなど、ビックバンドで演奏。


なるほど・・・要するにバンドネオンの音色がひとつのキーワード?
してみると、私の音楽のパートナーの中には、バンドネオン奏者はいませんが、ブルースハープをバンドネオン風に吹く人はいらっしゃいます。しかしそれはバンドネオンではないし、ブルースハープなので、アルゼンチンタンゴではないようです。

ブルースハープを吹くAさんは、埼玉県で有名な方なので、あえて言えば、“さいたまタンゴ?”なのですが、な~んともネーミングとしては、今ひとつ・・・。

あ!そう言えば、そのブルースハープのAさんは、自然がとても好きで、見沼田んぼをこよなく愛しているので、アルゼンチンタンゴとコンチネンタルタンゴに次ぐ世界三大タンゴ!!

ん~~!!“ミーヌマタンゴ” 

田んぼでタンゴ~~~!!

これでいこうと思います。
早速、ブルースハープのAさんにも演奏をお頼みしなきゃ!!

2018. 2. 13 K.maki-co



続アルパ三十六弦 第二話
「ポンポンスマホ」


いつもの歌のレッスンを終え、久しぶりに青山の老舗喫茶店で彼と待ち合わせ。
相変わらず遅刻をしてしまった私は、既にテーブルについていた彼の元に近づき、右手を上げ、お茶目に敬礼をして挨拶。そして、ご自慢の野菜と玉子のライ麦パンのトーストサンドを食べながら、週末に行ったコンサートのお話など、会話も弾んでいた時のことです。


“ポンポン、ポンポン”
っと、大人の雰囲気のこの店には、馴染まないかわいい音が、どこからともなく聞こえてきます。
ふと店内を見渡すと、その音の出所は、店の一番奥のテーブル。
1歳未満の子供が、バギーの座面の上に立ち上がり、哺乳瓶らしきプラスチックの容器をテーブルにポンポンぶつけているではありませんか。
かなりのポンポンの響きの中なのに、若い、それでいて少しインテリ風なお父さんとお母さんは、二人ともスマホに夢中で、子供の動作に気づいていないご様子。スマホに向き合ってしかめっ面です。


“ポンポン、ポンポン”
そのかわいらしい音は、店内に響き続いています。


すると今度は、「ア~ア~」、「ア~ア~」と声を出し、動き始めました。
しかし、まだ二人はスマホに夢中・・・。
そして仕舞いには、子供は泣きだして大騒ぎ。これにはさすがにスマホご夫婦もたまらず気が付き、やっと二人は我に返り、大泣きの子供を抱っこ。そして、抱っこスマホになりました。


本来、日本の喫茶店とは、語らいの場。しかし、最近は、人と人が向かい合っていても意外と会話は少なく、それぞれが向き合ってスマホを見ている、という光景がやたら目立ちます。
スマホがあれば、目の前の人は必要ない?時代がやってくるのでしょうか?
ポジティブに言えば、これが喫茶店の最先端なのでしょうか?

そんなことを思っていたら、目の前の彼が、突然言いました。
「あ、ライン見なきゃ!!」

・・・・・ポンポンポン、ポンポンポン。

2017 11.14 K.maki-co



続アルパ三十六弦 第一話
「ムーンサルトカンバセーション」


そろそろ巷では、2020年東京オリンピックの開催ムードが高まりつつありますね。
この間、千駄ヶ谷を歩いていたら、新国立競技場の工事現場にたくさんの数のタワークレーンがそびえ立っていて、まさにとっかん工事さながらの様子を呈していました。

さて、少し古い競技ネタになりますが、オリンピックの体操競技の技の中に、ムーンサルト
(月面宙返り)という技がありましたよね?
この技は鉄棒でぐるぐる回っている時に両手を離し、三回転しながら、ひねりを入れ、鉄棒に戻る、超離れ技で、地球の重力では到底考えられない月面で宙返りするようなことから、ムーンサルト(月面宙返り)と言われていたわけです。ご記憶のある方は、大勢いらっしゃると思います。

今日は、その体操のお話ではありません。
私の彼と楽しく会話をしていた時のことでございます。
「君の会話技術は、まるでムーンサルトだなぁ。」っと、訳の分からないことを彼は時々言うのです。
私は、ムーンサルトという響きが、とてもかっこよく、豊かで、褒められているような嬉しい気持ちになるのですが、ある時、「なぜ、ムーンサルトなの?」と彼に聞いてみました。
すると、「会話というより君の頭脳がムーンサルトなんだよ。」と意味深な答え。
「なんで頭がムーンサルトなの?」っと、更に私はつっこんで聞きました。
「要するに脳ミソの質量はともかく、回転が良くて、そしてひねりが一つ加わる。まるで、月面宙返りだ。」と。
「どうゆうこと?いいこと?」私は少し心配になり、更につっこんで、その真意を聞きました。

「いいことか悪いことか分からないが・・・、
例えば、AさんがBさんの話をするとする。それを聞いたCさんは、瞬時にBさんの話をCさんの話として、即ちB´として、AさんがBさんの話しをする前に、CさんがAさんに投げかけてしまうのである。
するとAさんは、Bさんの話をしたかったのに、気がついてみるとAさんはCさんからB´の話を聞かされている。これが月面ムーンサルトカンバセーションだ。」

これを聞いた私は、なにがなんだかさっぱり分からず、中秋の名月の夜に、ブラックホールの闇に吸い込まれていった。


注)この話は、具体的に名前を入れて読みなおすと理解可能となります。

2017.10.12 K.maki-co



 

第三十六話 「勘違い」


この頃、驚くことにコンサート会場でお客様から、
「アルパ三十六弦、いつも楽しく読んでいますよ~エッセイの才能もお持ちなんですね~」とか、
初めて共演するミュージシャンから、
「考えがしっかりしていて素晴らしいですね~」とか、
「そんな小さな体で作曲・作詞までして、どこにそんなパワ-があるんですか~?」とか、

私は同居している両親との食事を時々作るのですが、母から、
「あなたが作るお味噌汁は、天下逸品!!鰹節の出汁がしっかりとれていて、お母さん悔しいけど、負けるわ~」とか、
「あなたに影響されて、掃除が好きになったわ~」とか、
思わぬ事を言われることがあり、

「え!誰のこと?」
などと、思ったりもしております。
ただ、「おかげさまで~」なんて言ったりもします。
しかし、それは大きな勘違いだと思います。

ただ、あまりに周りから言われてしまうと、その勘違いが自分にも影響して、「私って多才なのかしら~?」
などと、自分勝手な思い違いをしてしまいます。

私本人は、目の前の事を毎日一生懸命、
「あ~これもやらなきゃ~あれもやらなきゃ~」
などと、七転八倒してやっているので、完成度も低く、為すことも為せずに、想いばかりがからまってしまう毎日なのです。
しかし、ありがたいことに、周りの勘違いの中に励まされ、前に前に進む勇気を与えていただいております。


さてさて、これにて、2012年8月22日から始めた私の多才?のひとつであります”アルパ三十六弦”を終了させて頂きます。
長い間、最後までお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。またどこかで御目文字いたしましょう。


これに懲りず、皆様のご声援がもしありましたら、また”勘違い”を始めよっかなぁ~♪。

2014.8.3 K.maki-co             



第三十五話 「温度差」


「多少の温度差はあるが、向いている方向は一緒。
温度差があった方が、熱交換が生まれて、推進力となる。」


このお話は、私の彼の友人のつぶやきです。
彼の友人は、いろいろな環境学を駆使して、様々な計画を立てているその道の達人だそうで・・・。

「 」の言葉は、自然界にあるいろいろな形で存在しているエネルギーを使って、人間に有用な電気や熱を生み出すことを研究している―それはそれは、これからの日本、いや世界のエネルギー問題を真正面から取り組んでいる人がつぶやいたのでした。
そんなエネルギーを取り出すための推進力を得るためには、多少の温度差があった方が・・・という事らしいのです。


私は始め何のことか???でした。ただ、少し時間がたったら分かる気がしてきました。

電気とか熱とかのエネルギーだけの話ではなく、これは人間と人間の関係にも言えるかもしれないニャン!
っと、私はひらめいたのでした。

有益なエネルギーも有益な人間関係を維持する法則も何か共通しているのかニャニャニャン。
私の世界で言えば、新しい音楽の旋律や新しい感覚の物語を生み出すためには、多少の温度差がある考え方や自分とは異なる考え方を持っている人たちの意見をうまく交換できて、関係を保つことができるならば、新しい推進力となるのかニャニャニャンワン!

今の世の中、自分と同じ考えの人同士や同じ趣味の人間同士が集まりやすいので、世の中全体には、パワーがどんどんなくなってしまう。温度差がない社会には、推進力が生まれないのかもしれません。


さてさて、T.V.では、NHKのさいださんが、明日の天気を予測しておりました。

「朝、晩は、7~8℃、日中は、20℃超え。体調を崩さないよう、温度差には十分に気をつけましょう!」


K.maki-co 2014.6.23
                        



第三十四話 「あと三話」


アルパ三十六弦の第一話「虎やの夏 茶寮混雑 順番待ち」から始まり、早三十四話目となりました。なんと二年の月日が経とうとしております。
「継続は力なり」とは、よく言ったものです。

あと三話でございます。

企画開始当初は、本当に三十六話などかけるはずがない。私の人生には人様に伝え聞かせる内容など生まれないのではないか?
また、一方、連続の文章企画などとても無謀な絵空事になると思った方が、私の両親を始め、私の事を良く知っている周りの方には多くいらっしゃいました。

ニャニャニャーーーーーン!
あと三話です。

何かここまでこれるとは、私も思っておりませんでした。
あと三話でございます。

実は最終の三十六話目の原稿は、すでに出来上がっております。
っということは、あと二話ニャンニャンニャーーーーン!!

何やら淋しい気がするのは、私だけでしょうか?
あんなに無謀な企画だと思っていたのですが、あと二話だと思うと淋しい気がいたします。
苦労と喜びは、同じなのかもしれません。


今日は、30℃超えの真夏日。
今、この原稿を虎や菓寮で書いております。これは何かの因縁かもしれません。
順番待ちががよく見えます。


「おい、氷が溶けちゃうぞ!」
っと、目の前に、宇治金時の練乳がけ、白玉トッピングのいつもの私たちの夏の虎やの風物詩が、とろっと溶けだしていた・・・・・今年も相も変わらず虎やの夏。

「継続は力なり」

2014.6.4 K.maki-co        



第三十三話「日報」


いつもの演奏仲間とその日の演奏の反省やらなんやら、いろいろな話をしていた時の事です。

「私、今”アルパ三十六弦”というタイトルで、三十六話のショートエッセイを書いているんですよ!」っと私。

「エッセイですか!良いですね!私も書こうかな・・。」っと演奏のパ-トナー。

「はい!日常のたわいのないことを面白おかしく書いているんです。なんのへんてつもないと思っている出来事でも、ちょっと視点を変えると、なんだか変わって見えるって不思議ですよね。」っと私。

さらに、
「あっ!あと一日の終わりには、日報も書いているんです。起床から始まり、その日何を食べたのか、どんな活動をして過ごしたか、その日の体調や電話連絡、日経株価まで・・・。その日に感じたことなどを忘れないように寝る前に書きとめているんです。」

「そうですか・・それは素晴らしいですね。エッセイはチャンスがあれば書いてみたいけど、私は日報はどうしようかな・・・。忘れたいことがいっぱいありすぎて、書き残しておくと、ちょっと体調が悪くなりそうだ。」っとパートナー。

その時は、それで会話は終わったのですが・・・、後から私思ったのですが、
「忘れる為に書いてもよろしいですよ!」
などと、その時に言えれば、そうしたらもう少し、気が利いている話になったのになぁ・・・。


忘れない為に書くのも日報
忘れる為に書くのも日報


今日の日報にそう記して、眠りました。


2014.5.24 K.maki-co



第三十二話「18歳の商品説明」


創業は室町時代。赤坂見附にあるT屋さんの茶寮での出来事です。

いつもの彼と待ち合わせ。今日は少し暑いからこの季節で一番涼しそうな甘味の王様、そう、あんみつといたしましょう。
彼は、暑くても寒くても変わらずお抹茶。宇治の調べ・・・。
あんみつはひとつを半分ずつ・・・なので、スプーンを二つ頼みましょう。
T屋さんのあんみつは、黒蜜に限ります。餡、寒天、赤えんどう豆、求肥、羊羹・・・それに黄色の謎の物体は・・・。
これは二人の間では、ちょっと苦手ですので、いつも相手に食べさせます。でも、なんだか分からないので、おもいきって、お店の新顔の若い店員さんに聞いてみました。

「この黄色・・・は、何でしょうか?」と私。

「あわ羊羹でございます。」と若い店員。

「あわ???・・・」とあわてる私。

「あわと申しましても、これはあわ羊羹を見たてた”さくらびじんこ”でございます。」

「さくら美人がどうしたって?」・・・と私。

「いえいえ、美人ではありません。ビジンコというお米の粉でございます。」

「???・・・」と私。
それ以上、質問できませんでした。お見事でございます。
さすが、新顔といっても創業は室町時代からの老舗の和菓子の店員さんでした。


時と場所は変わり、ここは、私の地元の所沢。最近、私の自転車のスタンドの調子が悪くなってしまったため、近くの自転車屋に修理に出しにきた時のことです。
少しスタンドが曲ってしまっていたようですが、油をさしてもらったら、スムーズに動くようになりました。
そして、レジの前に自転車用の油を発見。
私の家には、古くから自転車用の油がありましたが、あまりにも古そうなので、腐ってしまっているのかと、ふと思い、レジの若いお姉さんにご質問・・・。

「この自転車用の油は、どのくらいもつものでしょうか?」・・・と私。

「???」と若いお姉さん。

「ちょっとお待ちください。」と一言。お店の奥のなにやら店長さんらしき殿方に質問している様子。
その店長さんらしき殿方は、不審そうな様子で私を見て、にわかに、あきらかに不機嫌な顔で私に、

「あの~食べ物じゃないんで、賞味期限・・・っていうか、特にないんですよ。あえて言えば、2.3年くらいじゃないですか・・・10年もたっていなければ大丈夫ですよ。」

「ん~分かったような分からないような・・・」


っとここまで書けば、自転車屋さんと和菓子屋さんの差をはっきりさせてしまう話のネタになってしまいますが・・・、そこで私は考えました。

自転車=機械文明、世界標準
和菓子=日本の生活文化、数百年の歴史

私たちは今、どちらのスタンスにたって未来を築いていけば、豊かな時間を獲得できるのか?


賞味期限を求めるのか?
謎の”さくらびじんこ”の探求にいくか?


さて、あなたの選択は??

2014.5.6 K.maki-co


 



第三十一話「流れない石」


私は、オギャーと生まれて大方、三十年生きてまいりました。
皆様には、なんとなく使っている言葉や漢字の読み方の間違いに気がつかず、大人になってから、何かの機会でその間違いに気がつく事ってありませんか?
実は、私は非常にあります。気が狂いそうです。
今日は、そんなお恥ずかしーーいお話です。


先日、私の演奏仲間が、大舞台でソロを演奏するというので、友人を誘い、一緒にコンサートを聴きに行きました。
ソリストの彼の味わい深い音色に二人で脱帽。ホールいっぱいの客席からも拍手喝さいでした。
そしてその夜、一緒にコンサートを聴いた友人からメールがやってきました。
「やっぱり今日の○○さんのソロは、流石だよね!」
っという文章がありました。

私はずっと”流石”という漢字の読みを、”ルセキ”と読んでいました。
しかも、石が流れないと書いて、ルセキと読む。それは、物事に動じないとか、しっかりしているとか、そんな意味で・・・。
これは、つい最近の出来事です。

以前にも、とてもショックな出来事がありました。
「どういたしまして」という言葉です。
日本人として、「ありがとう」、「どういたしまして」は、日常頻繁に多く使う言葉ですが、私は、「どういたしまして」を「どうもいたしまして」とずっと使っていました。

そしてそして、まだあります。
夜遅くにかける電話で、一般には「やぶんに恐れ入ります」と言いますが、私は、「やぶに恐れ入ります」とずっと言っていました。


皆さんもこんな経験はありませんか?
思い違いとは、こわいものです。たとえ間違って使っていても、大人になるとなかなかその間違いを正してくれる人はいませんよね。


日本語は正しく使いましょう。

2014.4.24 K.maki-co



第三十話「還暦ラッシュ」


私の音楽パートナーのAさんは、昨年還暦。
私のボーイフレンドのBさんは、今年還暦。
私の音響のCさんは来年還暦。
そういえばあのDさんも、Eさんも・・・・

ドスコイ、ドスコイ!
還暦でドスコイ!!


みなさんそろそろ四分休符・・・・。

2014.4.8 K.maki-co



第二十九話 「Thanks Party広告原稿」


人間は年を取るほどに祝いの数が多くなるなぁと、最近つくづく感じます。
特に60歳の還暦を過ぎれば、70歳の古稀、77歳の喜寿、80歳の傘寿、88歳の米寿、90歳の卒寿、そして100歳の上寿・・・。とまあ、大きな年の変わり目には必ずお祝いごとが用意されています。

ご夫婦仲むつまじく、ご健康でいられれば、それぞれのお祝いごとが重なり、また子供に恵まれれば、またまたお孫さんに恵まれれば、ご自分のお祝い事に、更にお宮参り、初節句、ご入園、ご卒園、ご入学、ご卒業、それ音楽発表会、運動会、誕生日や、さらにはバレンタインやクリスマス・・・。
大変おめでたいことが毎月のようにやってきます。毎月のようにお祝いしていたら、嬉しいことですが、それはまた大変ですよね。

ここでご提案。
その年のいろいろなお祝いごとを一年に一回ひとまとめにして、ご家族、ご友人が万障繰り合わせて、一同に会する。そしてそれぞれに感謝。
○○家○○年の「Thanks Party」などと名をうって、まとめてお祝いしてみてはいかがでしょうか?

そして、その時には、私のアルパの響きで花を添えられたら・・・。
素敵なお祝いの時間をお過ごしいただけると存じます。

きっと今までにない、忘れられないお祝いの席となることうけあいです。


お申込み、ご相談は、こちらまで!!
t.k.house@tbg.t-com.ne.jp



尚、年間50回のThanks Partyを目標にしております。予定数に達し次第、締め切らせていただきますので、お申込みはお急ぎください!(そうなればいいんだけどなぁ・・・。)


2014.3.22 K.maki-co



第二十八話「私の休日」


私のお休みといえば・・・
一に寝ること
二に寝ること
三、四がなくて
五に寝ること。

などと失礼な事を言われています。


その理由は、当然私にあるのですが、だって3秒黙っていると、もう寝息になって15分~20分程、寝てしまいます。
まるで病気みたいに、自分の事を寝ながら寝言で”眠り姫みたい”などと、口走っているようです。そして、15分~20分たって、自分の突然発する大きなイビキで目が覚めます。
あまりにもそのイビキが大きくて、自分でもビックリして起きてしまうのですが、恥ずかしいのでしょうか?「今、何か言った?」などと、ごまかしてしまうようです。
これもひとつのビョーキですね

まだ自室のベットならまだしも、これがJR武蔵野線の中で繰り返されるのです・・・。

2014.2.23 K.maki-co



第二十七話「シンプルに生きる」


私の友人は、去年の春から首の痛みに悩まされています。
あまりにも痛いので整形外科に行き、MRIをとったりして、その原因を突き止めました。すると、頸椎の5番、6番の間の椎間板ヘルニアという何やら恐ろしい診断がなされ、治療としては、首のけん引、痛み止めのブロック注射、それでも治らなければ手術をして、痛いところを削るという恐ろしい話をされたようです。
しばらくは、4種類の薬を飲んでしのぎながらいろいろな治療を試みていました。しかし、なかなか症状は改善されず、悩んでいました。


ところが、ところがです。
そんなある日、
「なんか良くなりそう!」などと、久しぶりに会った彼は、不敵な笑いで私に話しかけました。
手術でもしたのかなぁ?と恐る恐る聞いてみると、
かばんの中から黄色い丸いものが二つ、ガムテープでくくってある変なものを出しました。
何と、テニスボールです。

彼曰く、ある本を読んで、テニスボールを使って、首の関節、腰の関節をそれぞれ3分間緩めるストレッチをすることで、痛んでいた頸椎のヘルニアがへこんでいく、というのです。
そんな魔法のような簡単なことで、人間の体は、良くなるのでしょうか?っと私は???でした。


今日は、2014年1月19日、場所は都心の公園の前にあるこじゃれたレストラン。私は遅い朝食をとりながら、読売新聞の特集記事を読んでいます。


良く噛んで食べることは、人間幸福や尊厳にもつながる。
そのことで、先日、日本顎咬合学会の事務所で見せてもらったビデオで知った。その内容は実に衝撃的だった。

肺炎で入院した69歳の女性は、口から栄養摂取は無理と診断され、体に何本も管が入り、寝たきりで表情も失われていた。だが、転院を契機に、女性にリハビリが始まり、口腔ケアも実施、義歯を装着した。
すると、柔らかいものから少しずつ、食事がとれるようになった。食事の量が増えるにつれてIVH(中心静脈栄養)などの管が順次はずされ、女性はベッドに座って食事をするようになる。さらに車いす移動、廊下の手すりの伝え歩き、つえ歩行と続き、2か月後には退院した。そして、半年後には海外旅行にでかけた。
旅行出発時の女性の表情は輝いていて姿勢も良く、入院していたときの寝たきりの女性とは別人かと思うほどの回復ぶりだった。口から食事をとることによって、筋力が回復し、身体のバランスも良くなり、意欲も出てきたからこそ、海外にまで出掛けることができたのである。・・・・
(2014年1月19日読売新聞朝刊より)


結局のところ、首の痛みにしても、人間の幸福や尊厳にしても、高価な薬やたくさんのお金で、痛みがとれたり、幸福になったりしがちだけれど、実はちょっとした運動や食べ方、時間の過ごし方で、人間はシンプルなことの積み重ねで、精神が幸福になったり、健康になったりするのかなぁと思いました。

振り返ってみると、私は小顔で顎が小さいのは、今までに物を良く噛んでこなかったからなのでしょう。現代人の噛む力を放置すると、高齢化と共に進む生活習慣病や認知症の急増を招き、子供の成長や学習能力にも影響するようです。

「今からでも遅くはない!!良く噛んで、幸福を手に入れよう。」っと思いながら、強い決心でいたところ、お客様から、

「まぁ~~小さなお顔!小顔でいいわね~」
っとほめられました。


「幸せは小顔にもやってくる・・・!?」

2014.2.5 K.maki-co



第二十六話「NORAH・猫・ニャン」


食べ物を咀嚼することとモノを考えることは同じメカニズムではないだろうか?
現代は、固くて、噛めば噛むほど、咀嚼するほどに味が出る食べ物より、簡単に呑み込める食べ物がもてはやされ、同時に簡単に答えを求める思考方法が広まっているように思う。

僕らは、食べ物の後ろにあるストーリーを大切にして、考えて、食べていきたい。

良い思考は良く噛むことから始まるのかもしれない。
(NORAH Farmer`s Market Chronicle Season2:Autumn2013より)


私は、今考えると、とりあえず自分のお腹を満たすことを優先して、何を自分の身体に取り込むのか、とかは考えない食事を繰り返していた。

ところがこの頃は、何をどのような時間に、どのような食べ方で、誰と食べるか、ということが、とても自分の生活を構成する上で大切なシーンだなぁとつくづく思うのであるニャン。

特にNORAHの書かれている食べることと物を考えることは、自分の中では、ふに落ちた表現だった。

私が、食べ物を食べることを大切にしだした時から、今までの漠然と物事を考えていた体質から、私が何をしたいのか、私自身どのような私なのかが、少~しずつ現れてきたような気がするニャンニャン。

な~んてことを思いながら、「あなたがあなたであるように、私は私になれました」という曲を歌っているんだニョーーン。

2014.1.15 K-maki-co



第二十五話「年のはじめにsay thank you!!」


東京オリンピックのスペインで行われた最終招致プレゼンテーションで、滝川クリステルさんが、"お・も・て・な・し"と、、日本のプレゼンテーターで世界にアピールしたことは、記憶に新しいですね。
滝川クリステルさんの世界的な美貌であれば、"お・も・て・な・し"の一言で説得力がありますね。

ところで、私はコンサートの時に、何かにつけて、「ありがとうございました」としか言えません。
「今日は、お越しくださいまして、ありがとうございました。」
「CDをお買い上げ頂きまして、ありがとうございました。」
「アンコールをありがとうございました。」
「励ましのお言葉をありがとうございました。」

結局、"あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す"としか言えません。

演奏することでめいっぱい、歌うことでめいっぱい。
頭は、真っ白で他に何も言えないのです。
しかし、それでは、私は"ありがとうの女"になってしまい、内容がありがとうしかない印象になってしまいます。

ですから、アルパ三十六弦など、たとえ文章が下手であっても、少しでも私の頭の中を見ていただきたいと思い、小さな脳みそをフル回転させて、必死にエッセイを書いているところです。


「年のはじめに、今年もエッセイを読んでいただき、ありがとうございました。」


2014.1.4 K.maki-co

 




今年の年賀状に送付させて頂いた文章には、年頭の挨拶にお披露目いたしましたが、あれから早1年がたち、年末になろうとしています。
そこで、三十六弦のネタがつきたわけではありませんが、正式に「アルパ三十六弦」のHPに掲載させていただきます。

1年たってもまるで変わらない充実した日々が続いております。どなた様もお身体大切にして、また来年お会いいたしましょう。



第二十四話「充実な日々」


・アルパ三十六弦の執筆

・CDのストック作り

・次回のサンクスパーティーの招待状の作成

・ねこのぬいぐるみ作り

・私の分身の人形作り

・お礼のお手紙

・ホームページの更新

・途中になっている作曲の続き

・来週のコンサートの練習・・・

やることがいっぱいでやることを考えていることで、その日が終わっていく毎日。

「充実な日々。」


2013.12.24 K.maki-co


「今年もご声援いただき、誠にありがとうございました!!
来年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。」




第二十三話「アスリートの魂」


NHKで放映されている「アスリートの魂」を御存知でしょうか?
国際舞台のさまざまなシーンで活躍している、日本人アスリートのひたむきなトレーニングの舞台裏などを密着取材する番組です。
そんなひたむきさが、私は大好きです。

以下、倉品版、私的、アスリートの魂をご紹介します。


シーン1
定年を過ぎた父の代わりに、アルパを移動させるために自力で車を運転し、自宅横の車庫入れを、何度も、何度も、何度も繰り返す。5回、6回繰り返す。何回やっても駐車できない。
額から小顔のあごに伝わっていく一滴の汗・・・アスリートの魂。


シーン2
マンドリンのパートナーのたっての希望に答えるべく、初めてのライブ演奏でミスタッチをしてしまい、それ以来、すっかりトラウマになってしまったオリジナル曲「置き去りでお散歩」のフレーズ。
自宅の練習室で何度も繰り返し、繰り返し、繰り返し練習し、失敗している。
額からリズムを刻む左腕にしたたり落ちていく一滴の汗・・・アスリートの魂。


シーン3
かねてより探していたアンプを入れるキャリーケースをやっと見つけたが、しかし、寸法があまりにぎりぎりだったため、一人では出し入れができない。
やっとの思いで、なけなしのお金で購入したケースを無駄にしないようにと、がんばって、がんばって、がんばって出し入れを練習している。
額から、この頃、少し豊かになったかのような錯覚をしている胸元に落ちていく一滴の汗・・・アスリートの魂。


日本の人口は、1億2730万人。(2013年度 総務省統計局発表)
テレビで紹介されるアスリートは、せいぜい40人~50人でしょうか?
しかし、私のように名もないアスリートが、1億人もいます。

7年後の2020年のオリンピックイヤーに向けて、アスリートの魂は続く。

「がんばれニッポン!!」


2013.12.12 K.maki-co


「気合い、精進!!」



第二十二話「旅のお供」


「いらっしゃいませ~。駅弁、ビール、ジュースはいかがですか~?」
列車の旅の風物詩、車内販売がやってきた。
「川崎のしゅうまいに牛タン、カルビのお弁当に釜めし・・・」
お約束のように、狭い列車の通路にワゴンが旅のアクセントとして、やってきました。

すると、背後からお客様の「ビール、さきいか、牛タンはある~?」の声。
ウィークデイの昼間にも関わらず、まさに非日常。
これが普通の日の普通の場所であれば、このような会話は、いくら乱れている日本であっても聞こえてはきません。
しかし、ここは、温泉に向かう観光列車・・・。

しかし、おや?何か変だ!
良く見ると、何と売り子さんが、男の人ではないか?!しかも今どき流行りの佐川男子もどき。

はてはて、まだまだ、何か変だ!!
”ビール4本、さきいかに牛タン”を買っていたのは、20代中頃の女子ではないか?!。
なんともはや、ここまでの非日常はさすがに少し・・・。

しかし、私も負けずに、
断チョコしていたのに思わず、

「コアラのマーチください!!」と私。
観光列車ならではの、日常の制約からの逃避行動!!



あ~~~ リフレ~~~~ッシュ!!


K.maki-co 2013.11.18



第二十一話「広告批評」


素晴らしい秋空の中、久しぶりにJRの中央線に乗って、新宿から東京駅に異動していた時のことです。

「中央線快速」 市ヶ谷からお茶の水駅の間は、外堀の水面にキラキラと太陽光を映し、秋の色濃い緑のじゅうたんの上を、本当に気持ち良く、心も快速になる中央線快速。

最近はとても忙しくて、電車移動の時は、アルパをかついで疲れきっているか、あたりかまわず爆睡しているかでした。当然、車窓の上の額面広告などを見る余裕もありません。

しかし、今日は心も快速。天気秋晴れ。余裕しゃくしゃく。
そんな気持ちで車内の広告などを見渡していました。
  

「すべすべのススメ」
「脱毛サロンにずっと通わなくても大丈夫ですぞ~」
などの美容系広告たくさん。

「回り道こそが目標の近道 ○○大学」
「世界も自分も変えるシゴト シニア海外ボランティア」
などの社会教育系たくさん。

そして、「初めての○○○」
言わずもがな金融系などの広告たくさん。
ほとんどこの三つのジャンルでまとめられています。現代の少し忙しく、どこか寂しい世相を反映しているように感じました。

「美容」、「お金」、「生涯教育」、こう書くと、もっともらしく聞こえますが、車窓の秋の本当に気持ちの良い風景とは、何かそぐわないように思えました。

さてさて、話は車内に戻します。
中央線快速の軌道は、外堀に沿っています。その外堀は、江戸時代の江戸城を守る為に作られたお堀です。およそ400年前の土木造形物でしょうか?JRの中央線は、明治、大正の鉄道造築物でしょうか?

そんな歴史を感じて、先人たちの努力と志の間の中で、私は移動しています。

さてさて、広告の質については、私なぞは、当然、とやかく言う立場にありません。
ちょっとだけ手前味噌・・・ですが、
こんな秋晴れの日の快速電車の額面広告には、オーガニックコンサート開催、などと書かれた広告が良く似合うなぁと思ってしまいました。



今回、題材に使わせていただいた「広告批評」の天野祐吉さんが、この原稿を書いていた10月20日に80歳でお亡くなりになられました。ご冥福をお祈り申し上げます。合掌。


K-maki-co 2013.11.5



第二十話「異文化接触融合」


誰しもが御存じの超有名な中国料理本店で開かれる祝宴・・・、その曲目を営業の責任者と、つめていた時の出来事です。今日は、そんなお話です。

その「宴席」とは、中国料理の高級食材を料理長が工夫をこらし、お偉いさんに食べていただくようなそんな「宴席」でございます。その「宴席」の迎賓にと、私がノミネートされて、プレゼンテーションを無事にくぐりぬけ、打ち合わせと相成りました。そんな打ち合わせでの会話です。

その担当の方は、「祝宴」のメニュー設定から席次、はたまた曲目に至るまで、神経をするどく研ぎ澄まし、そんなピリピリと空気がはりつめている時の出来事でした。


「ところで、倉品さん、お食事を皆さんに食べていただく直前の一曲は、どんな曲がお勧めでしょうか?」

「やっぱしアルパだし、いろいろあるけれど、コーヒールンバでしょ!」

っと妙に明るく、決め打ちのような言い方で、自信を持って言ってのけてしまいました。

すると、その担当者は、一瞬顔色を変え、
「高級な中華料理を召しあがっていただく一番最初にコーヒールンバは・・・。」っと絶句してしまいました。


なるほど、中華といえば、スリットが入ったチャイナドレスを見にまとい、二故の楽器などで、中国三千年を想わせるゆったりとした音色をキューキューと響かせている雰囲気・・・。
しかし、この宴席は回を何度も重ねていると聞いていたので、私としては、私が呼ばれたということは、一流の中国料理を日本の銀座のど真ん中で、南米の音楽を聴きながら、非常に贅沢な三大文化の融合の中で食する一皿は、さぞや美味だと思うのです。

まさにグローバル社会にぴったりの選曲だと思い、コーヒールンバ!
ルンバがダメなら、サンバ。サンバがダメならタンゴ~!!

などと、心の中では思っておりました。
しかし、少しアバンギャルドすぎるな~と思いましたので、「"さくら色のしずく"などいかがでしょうか?」と、お勧めした始第でございます。

さて、わが家の今日の夕食のメインディッシュは、大衆中華料理のスーラータン。私のコーヒールンバのデモテープを聴きながら、食べてみることにいたしましょう。


K.maki-co 2013.10.6



第十九話 「倉品真希子 世界の旅」


昔、「兼高かおる世界の旅」というT.V.番組があったことを御存じの方は、かなりのご年配だと拝察いたします。
当然ながら私も存じません・・・・が、今日は、「倉品真希子世界の旅」・・・というよりか、ヨーロッパ各国巡りの旅にご招待いたします。
っといっても○○は無し。ところは、東高円寺の、とある和食屋さんでの出来事です。


今日の私の連れは、とても洒落たワイン好きな殿方であります。
その方が、何を思ったか、

「今日は、真希ちゃんとヨーロッパ旅行だ~」
などと、突然、口走ったかと思ったら、板長さんに、

「ここのお店で保管している赤ワインをグラスで、できる限り多い種類で飲んでみたいんだが、全ての種類を出してくだしゃんせ。」
などと、言うではありませんか・・・。

フラッと入った和食屋さんでしたが、なんとワインがご自慢のお店でした・・・。


イタリア アブルッツォ産 「グランサッソ」・・・チェリーのほのかなバニラの香り。

フランス ボルドー産 「シュヴァル カンカール」・・・樹齢の高いメルロー種を使用した気品のある、オーク樽の香り。

スペイン リオハ産 「マルケス デ ラ コンコルディア」・・・ブラックベリーの果実味とほのかな酸味のバランスが良く取れている。
  ・
  ・
  ・
  ・
私は初めてでした。ワインの飲み比べでヨーロッパ旅行ができるなんて・・・

一口飲んでは、

「う~ん、本当だ!こちらの方が、ボルドー風の上品に整うハーモニックな味がする。」
などと飲み比べては、日常では使ったことのない言葉を並べ尽くし、講評して、にわかソムリエぶりに。
すっかり気分も良くなり、お顔もほのかにワインレッド。


そんなヨーロッパ旅行をしてみたのですが、結局のところ、そう、すっかり酔っぱらってしまいました。
最後は、ユーロ統一に行き着き、みんな同じ味になってしまったのでした・・・。


「ボナペティ!」
「ボンボヤージュ!」


注)ボナペティ「召し上がれ!」  ボンボヤージュ「良い旅を!」


K.maki-co 2013.9.7



第十八話 「初めての傷」


かのエリザベス女王が、外洋の航海旅行の時に使用されていたという由緒あるトラベルケースを、私は実は手に入れたのでした。

そのケースの名前は、グローブ・トロッターと言います。
なぜ私がそのトロッター(以下トロッターちゃんと呼びます)を手に入れたかは、長くなるので、今回はかつあいさせていただきますが、これはこれでいつかアルパ三十六弦で発表しようと思っております・・・・。
でも購入に至るいきさつには、不純な動機がありますので、お伝えできないかもしれません。あ~残念・・・

さて、話はトロッターちゃんに戻します。
トロッターちゃんは、私の外洋旅行のお供ではありません。私の演奏とともに、演奏の小道具(譜面台、衣装、靴、CD・・・)などを、今までは段ボールに入れて、移動していたのですが、あまりにそれでは、かわいそうなので、私の大事な仲間たちの極上な移動ツールとして購入したものです。

当然、旅の小道具ですから、いろいろな扱いをされて、傷つき、でも修理しながら、長く使おうとは思っておりました。ただ、やはりトロッターちゃんがあまりに美しく愛おしいので、なるべく傷ひとつつけずに使おうと決心しておりました。


さてさて、つい先日のこと、いよいよコンサートが入間市であり、トロッターちゃんの出番と相成りました。
通常ならば、宅急便でおまかせするところ、私の音楽仲間が車を出してくれるので、いよいよ後部座席に愛おしいトロッター様、いやいやトロッター姫を”そお~”っとおさめ・・・

っとその時!!

相方がなんの躊躇もなくトロッター姫の上に、マンドリンの頑丈なケースを~~!!
(トロッターVSマンドリンのハードケース)
私は、これは負けだと思い、多分傷がついただろうと思いましたが、何食わぬ顔で車に乗り込み、出発しました。


しかし・・・

「車を止めて~!」
っと、突然、私は、後部座席に駆け寄り、トロッターちゃんをはがいじめにしているマンドリンのケースから身を守るように引き上げてみると・・・

「ギョギョギョ~~」一筋の傷が~~

「あ~~~~~」
しかも予想だにしなかったマンドリンのケースによる傷とは・・・。
しかし、これから相方と一緒に演奏があるので、何食わぬ顔でトロッターちゃんから引き離し、思いっきりはじにつめて、そして助手席に戻りました。

「あ~あ、傷ものになっちゃった」と思わず言葉に出したら、隣から、
「何言ってんの?いい歳して」っと、勘違いした返事が返ってきたのでありました・・・。


でも考えてみれば、初めての傷にしては、いい傷。これからは、私の演奏とともに思い出の傷をたくさん作り、立派なトロッターになるに違いない。
そう言い聞かせながら、会場へと車を走らせたのでした。


K.maki-co 2013.8.16



第十七話「アーバンリゾート」


なにか古くさい響きのタイトルになりました。今日のお話は、そのアーバンリゾートのお話です。

少しだけ長い休日が続き、(コンサートの依頼がとても○○なだけですが・・・)練習、作曲活動などを精力的にこなしておりました。・・・が、少しリゾート気分を味わいたくなり、されど時間はあれど、○○はなし・・・。
そんな時、青山あたりを散歩し、とてもお洒落な路地裏を歩いていた時に、ふと場違いな「銭湯」の文字。
私はふらふらとその「銭湯」の入っているビルの階段を上がってしまい、夢うつつで自動券売機に450円を投入し、そのまま受付らしき場所に誘導されてしまいました。

若いお嬢様二人の「イラッシャイマセ~」の声。
さらに、「手ぶらセット」などというボタンを押し・・・。
本当に私は手ぶらだったので・・・。

気がつくと「男」「女」などと書かれている入口を入り、ロッカーに今まで着ていた洋服を投げ入れ、あっという間にスッポンポンになっておりました。
すると、天井からフランスの女性シンガーの歌声、とてもリゾートフルなミュージックが流れているではありませんか。

そして、私は次なる扉を開け、浴場へと進入したのです。
シャワーを浴び、なんと「ジェットリラクゼーションバス」などと長い名前のついたお風呂に入りこみました。


ジューーーーーワーーーーーーーーーーーーーーー!!!

ズバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

頭の中は、ジェットストリーム・・・
驚くことに10分前では、お洋服を着て青山を散歩していたのにです。
今はスッポンポンのズバーーーーーーーーーーーーーー状態。


なんとも不思議な体験、異空間のアーバンリゾートでありました。
もちろん湯上りには、あのコーヒー牛乳です。


K.maki-co 2013.7.13



第十六話「OFFと言われる女」


彼から時折やってくる深夜の質問メール。
「来週の予定は?」
月曜日は、リハ。火曜日は、ハリ。水曜日と木曜日はオフ。金曜日はレッスン。土曜日はコンサート・・・などと、何気に返信しています。

さて、今日は、楽しいオフの木曜日。彼とランチデートです。
青山のお気に入りの喫茶店でいつものサンドイッチ。
今日までのお話やらで楽しく過ごしています。

さて、これからどこに行くのやら、喫茶店を出て、地下鉄までのちょっとしたウォーキング中での出来事です。

歩いている私の姿を見て、
「オフの日は、いつも歩き方もオフだよね~」
っと言われました。

どうやら、彼と会って最初の1時間くらいは、程良い緊張もあり、背筋もぴんと伸び、一本筋が通っていて感じが良いようですが、少しするとおばあさんのように腰が曲がり、歩き方もだらしなくなるらしいのです。職業柄、集中できる時間は、1時間なのでしょうか???


その夜は、携帯はOFFにして眠りました。


K.maki-co 2013.6.24



第十五話「お祈りの街角」


今年は、突然風が吹く日が多いですね。「爆弾低気圧」などという恐ろしい名前も、ここ数年程前から良く耳にするようになりました。今日は、そんな風にまつわるお話です。


久しぶりにブライダルの演奏依頼があり、さいたま新都心の駅に早めに着いた時の事です。
まだ時間があるので、喫茶店でお茶でもしようかなぁと、駅を出ると、埼玉アリーナへ向かうたくさんの若者。私もその流れに乗って歩いていきました。
すると、突然「ビュッフォ~~」っと、ものすごい勢いの”アゲインスト”。
アルパが風にあおられ、危うく身体ごともっていかれそうになりました。
私はすぐにビル壁の角に逃れました。
そのコーナーを越えれば、目の前は喫茶店なので、一刻も早く店の中に避難したいのですが、しかしその付近は、風の通り道。その一歩が踏み出せません。

そして、しばらく風がおさまるのを待つこと、10分、15分・・・
もう、喫茶店でお茶どころか目的の会場に向かわねばならない時間になってしまいました。

「どうか風がおさまっていますように~」っと祈りながら、一歩踏み出しコーナーを曲ろうとしたその時、

「ビュッフォ~~」っと、今度は、髪が逆立ち、なんと”フォロー”
前のめりになり、危うく転びそうになりました。
アルパはまるでヨットの帆のようで、小さな体の私には、もはや操縦不能です。
そんな事をしている間に、本番の時間がいよいよ迫り、相方に電話をして助けを求めました。そして、二人でアルパを抱えて、そのコーナーをよけて、大回り。風の吹く道を避けながら、必死の思いで会場に到着。無事に生還いたしました。

そして、仕事を終え、腕が筋肉痛になりながら、家にご帰宅。

「風がものすごくて、あのコーナー、本当に大変だったのヨ~!」
っと、私は楽器を下ろして、2階の自室に上がりました。

おりしも一階の居間では、父がゴルフのニュースを観ていました。
ゴルフの世界では、マスターズが行われるオーガスタ・ナショナルコースの11.12.13番ホールは、「アーメンコーナー」と呼ばれているようです。
その3ホールは、高台で、風が強いことが多く、ゲームの行方の鍵を握るコーナーだとか・・・。


「まきこは、いつからゴルフを始めたんだ?」っと、父が母に・・・
すっかりT.V.のゴルフ番組に感情移入してしまった父の一言でした。


K.maki-co 2013.6.9



第十四話「黄金週間映画三昧」  


「舟を編む」  

2012年松竹 アスミックエース配給
石井裕也監督 松田龍平 宮崎あおい主演 

2012年本屋大賞第一位をとった三浦しをんの「舟を編む」が映画化されたもの。
ある出版社の辞書編集部で定年を迎えた荒木公平の後継として「右を説明できるか?」を答えられたマジメな性格の馬締光也(マジメミツヤ)が営業部から抜擢される。そして、新しい辞書を作るのに28年もかかるという一生の仕事を手にし、言葉を乗せた舟が大渡海を渡る・・・そんなストーリーです。

「カルテット!人生のオペラハウス」  

2012年ギャガ配給
ダスティン・ホフマン監督 マギースミス、トム・コートネイ 主演

引退した音楽家たちが暮らすハウスで、英国音楽史に名を残す旧スター4人が再会する。過去の栄光に縛られ、歌を封印してしまった大スターのジン。しかし、ハウスの存続をかけ、史上最高齢のオペラコンサートが開かれるまでのストーリー。世界的に有名な実際のソプラノ歌手やトランペット奏者
らがキャストとして参加。


「ヒッチコック」 
2012年20世紀フォックス映画配給
サーシャ・ガヴァシ監督 アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン主演

46本もの作品を世に出した60歳のヒッチコックは、唯一無二の作品を作りたいと目につけたのが、実在の凶悪殺人犯エド・ゲインをヒントに書かれた小説「サイコ」。周りの反対を押し切り、自己資金で映画を撮影するサスペンスの神ヒッチコックと、影で支え続けた脚本家でもあり妻でもあるアルマとの二人の天才の知られざる物語。



このような映画三昧をしたのは、生まれて初めてでした。尚且つ、映画館意外で二つのT.V.映画も観てしまいました。
今日は、この映画たちについてのお話です。

場所は、日比谷。日比谷と言えば、都心映画ファンのメッカですね。今は、小規模な映画館が3つ、4つありますが、その映画館は日比谷の名に恥じないような、ロードショーではなかなか観られない映画がかかる箱が多いように思われます。私の観た映画もそんな映画でした。大きなロードショー映画館とは異なり、座席数も少なく、”映画を観る”という雰囲気をかもしだしています。時間に余裕のある方は、20分程前にロビーに集まり、何やら楽しそうにお弁当を食べている人がいたり、映画談議に花を咲かせたりしています。そんなお話を聞くことができるのも、映画鑑賞の楽しみにのひとつですね。

今回の映画鑑賞のお供は、一口サイズのザラメ煎餅。
でもやっぱりお煎餅の音と袋から取り出す時のガサガサする音も、またこれが目立ってしまい、本編が始まってからは、ムムム・・・食べられず。
すると、お隣のカップルは、なんと”あたりめとぬれせんべい”
音なしの構えです。通ですね~


今回の映画三昧、どの映画も共通していえるのが、若い時の栄光、それが年を経てどうなるか、ということに焦点を当てている気がしました。
私は今まさに夢に向かってロングロングドライブの真っただ中ですが、自分も人生を振り返れるだけの質や価値が築ければ、「年をとる」ということを素敵な事だなぁ、と思えるのだと思います。そのためには、毎日の日々の営みをしっかりと過ごすこと。これに尽きますね。
そして、いくつになっても、女心のラブソングは、歌い続けていきたいですね。

さて、私の人生物語の本編も、いよいよ始まりますよ~!
どうぞ、どなた様もお見逃しなく!!


K.maki-co 2013.5.29



第十三話 「あなたはどちらの派?」


あったかい銀シャリ・・・(銀シャリは死語ですか?」
健康志向の玄米。
さて、あなたはどちらの派ですか?

私の母と父は、がぜん白米派。
玄米は硬くて、消化に悪い。更に高級なイメージがなく、やはりお米は白米がいいそうです。これは、父と母に限らず、この年代の方の一つの共通の見解だと、私は思っております。

私の周りには、健康意識よりも、ダイエット志向なのでしょうか。
白米でなく、玄米派がけっこういます。
肉より野菜。白米より玄米。洋菓子より和菓子・・・
これは、私だけに限らず、私の年代?に共通しているひとつの価値観だと思っております。


さて、話は変わりますが、福井県にある、かの有名な禅寺でのこと。

修業に入って、二~三か月ぐらいで、若い修行僧の三分の二くらいかかる病気があると聞きます。

それは、「かっけ」。
ビタミンB1不足なのでしょうか?
修行僧といっても、二十歳前後の若い男の子。隔絶された世界の中で、甘いものがこよなく欲しくなり、それを補うのに食事の時にことさら白米を食べるそうです。
白米は噛めば甘く、お口に広がります。しかし、知らず知らず白米偏食となり、「かっけ」になっていきます。玄米の方が、修行僧らしい感じがしてしまいますが、しかもこれは700年続いているそうですが、修業になぜ白米なのでしょうか?

ビタミンB1が多く含まれる玄米。今年から玄米に変えたら、「かっけ」になる人は少なくなるかもしれませんね。

いつしか、そのお山に伺って、禅問答をしたいと思っております。


問い  「あなたは、何派?」



注)禅問答とは、禅宗の僧が、悟りを開く為に行う問答


K.maki-co 2013.4.22                  



第十二話 「ジャズの即興」


私は、当然というか一応というか、ミュージシャンの卵でございます。
しかも、それを生業にしておりますので、プロと自負しております。

音楽仲間が集まり、リハーサルをしたり、作曲活動をしたりすることがあるのですが、少しメンバーがのってくると、即興が始まったりいたします。
時折、私も即興でお返ししたりして、それはそれは楽しい時間が流れます。

今日のお話は、その即興についてのお話です。


私は、人とお話する時、これは誰しもがそうだと思いますが、(特にご婦人は?)思いついた事が、瞬時に口から出てしまいます。
話の脈略がなく、前後の関係もなく、お口から次々に飛び出てしまいます。

特に彼とお茶のみ話をしている時には、それはそれは、絶好調となり、その私の話しぶりを、彼は、「脳みそが口からはみ出しているよ。」などと、気持ちの悪いことを言いながら、ケラケラと笑って聞いております。
私に比べて、彼は脳みそが脳の位置に正常に収まり、当然、口との一定の距離があります。ですから、お話が即興とは言え、理路整然としています。
ムッムッ、悔しい程、繋がるのであります。

彼は、音楽の世界の人ではありませんが、彼がもしミュージシャンであったとするならば、とても優れた即興演奏をするプレーヤーだろうなぁと感心してしまいます。
口から突然出た話し言葉なのに、まるでそれを文章にそのままにしてもおかしくない即興話法なのです。


さて、話は現実に戻します。
私は、アルパ三十六弦の執筆活動を今まさにしているのですが、何とも、もはや口から脳みそが出てしまいそうな文章しか浮かびません。
三十六弦のショートエッセーをひとつひねり出すのに、果たして何日かかるのでしょうか?

「悔しい!!脳みその位置を正しく頭蓋の中に収めるエクササイズはないのかなぁ・・・」
と、思いつつも、そんな事を彼が聞いたらば、
「脳みその位置関係ではなく、脳の質量の問題ではないかなぁー」っと、
きっと失礼なことをシャラっと言い放つと思いますです。


K.maki-co 2013.4.4                         




第十一話 「白もの」


以前、光りもののお話はしました。
光りものと言えば、子肌、あじ、さば・・・
今回は、「白もの」のお話です。


ここでの白ものとは・・・
白米、砂糖、塩、小麦粉 etc・・・
要するに、主食のお米から調味料に至るまで、私たちが普段口にしている、至るところにある白い食べ物について、少し考えてみました。

「なぜ、白いのか?」
お米は、玄米をみがいて、周りの皮?などを削り取り、白い米粒に精米するということでしょうか?
砂糖、塩などは、何かの工程を経て、精製して、白い粉にするのでしょうか?
いつも使っているものなのですが、なぜ白くなっていくかは、曖昧な理解しかありません。
ただ、私はこの頃、白米より玄米を好んで食べるようになっております。
白米より玄米の方が、繊維質やビタミンB1とか、そうゆうものが残っていると聞いております。現に体調が良く、しかもおいしい!!
っとすると、白米は何なのでしょうか?
ある種の栄養素を削いで残ったもの。色は白いけれど、内容が少し薄くなっている感じがいたします。

見た目は、ピカピカきれいですが、食べ応えは、玄米に分があると思います。
白米は確かに柔らかい。甘い。おいしいのですが、食べごたえは、玄米にはかないません。

さて、お話は砂糖に戻します。
砂糖の原料は、サトウキビ?とうもろこし?良く分かりませんが、やはりお米とは違うと思いますが、原材料を精製して、白い粉になるのだと思います。
何か大事な栄養素なりを削り取った後なのかなぁと思います。

さてさて、話は現実社会に戻しますと、昔は健康的な日に焼けた人が、人間社会に多く存在したと思います。肌が黒かったり、黄色だったり、それぞれ固有の人がいましたね。

しかし、この頃は、美白とかホワイトニングとかの言葉が飛び交い、人間社会が白くなっていくように思います。白くなっていく過程に、何か大切なものを捨てていっているのかもしれませんね。


さて、そろそろ、コンサートの本番の時間が迫ってまいりました。
お顔にいっぱいファンデーションを塗り、ピカピカ美白顔で、出掛けることにいたします。


K.maki-co 2013.3.17




第十話 「何かのヒント」


よくいろいろな経験をした後に、「そうゆうことが、何かのヒントになるのよね~」などと言うことが、皆さんはありませんか?
「何かの勉強になるわね~何かの役にたつわね~」とか。そんな言い回しを時々、言ってしまうことはありませんか?

私は結構言ってしまう方です。


先日も、私の友人と話をしている時に、その言葉を使ってしまいました。
彼は、生活の一場面をきちんと再現し、興味深い話に組み立ててしまう人です。私はその人の事を、心の中で、”人生の達人”と思うことがあります。

私が彼の話を聞いた時に、
「何かのヒントになるわね~」とつぶやきました。
そしたら、彼は言いました。
「何かのヒントっていうけどさ~一体何のヒントなのよ?」

私はそれを聞いて、すぐには答えられず、
「何かの答えのヒントなんじゃないかしら~」と口走ってしまいました。

「じゃ~その答えって何なの?」
私は照れ笑いしながら、そのするどい問いに対して、
”私は答えを持っているのだろうか・・・ヒントばかりの答えのない人生をさまよっているのではないか・・・”っと照れ笑いの裏に心の中では冷や汗でした。

彼は更に言いました。
「何かの役に立つとか、何かのヒントとか言っているけど、ヒントそのものが生きている事じゃない?!経験することそのものが生きている事じゃない?!影響したりされたりすることが、生きている事、そのものじゃないかな?!」

「影響?」と私は繰り返しましたが、もうすでにその時は、頭がいっぱい。何が何だか分かりません。

更にレストランで食事の後でのお話だったので、お腹もいっぱいになり、気が遠くなるほどの眠気の中で、つい口走りました。


「今日は、このくらいにしておきましょう。いいヒントになりました。」

K.maki-co 2013.3.5



第九話 「ちょっと嬉しいお話」


先日の演奏前の出来事です。
めったにないことなのですが、控室の大鏡で立ち姿、容姿などを念入りにチェックしていた時のことです。

”あら、私、容姿がまだまだいけているかも・・・”と、うぬぼれて思っていたその時、
”あれ、御髪に白いものが一本・・・!
初めてでした。

なんと、白髪が生えているではないか・・・
思わず「ギャーーーーーッ!」っと、控室に響き渡る悲鳴。


さて、場面は変わり、私は、なんちゃってベジタリアンなので、めったに食べないのですが、かの有名な目黒のとんかつ屋さんに行った時のことです。カウンターでひれかつと豚汁を食べ、お会計を済ませて、席を立とうとした時、
お店の人が、ほほ笑んで、私にチョコレートを二つ差しだしました。
初めてでした。

「ありがとうございます」っと、手を出して、もらったものの???でした。
状況から推測すると、どうみても子供扱い・・・・。


背が小さいやら、童顔やら、いつも子供扱いされている私としては、大鏡の前では、白髪交じりで、やっと大人の仲間入り。でも、とんかつ屋さんでは、チョコレートで子供に逆戻り。

ちょっと嬉しいような、ちょっと悲しいようなお話でした。

K,maki-co 2013,2.23



第八話 「長物」


昭和26年に、かの吉田茂が外国のバイヤー相手に宿泊所として皇居前に建てた某ホテル。
そのホテルは50年たって、新築されました。その皇居前のピカピカのホテルの中のお寿司屋での出来事です。

フロアー支配人に案内され、通されたお寿司屋は、白木のカウンターで、すがすがしく、日頃、私のような庶民が出入りすることができない別世界の空間がありました。
先に何組かのお客様。品の良いご婦人、殿方が私の分からない言葉を使っております。

さて、板前さんというのでしょうか、職人さんというのでしょうか?
お客様の注文を受けて、うやうやしく冷蔵庫から取り出すお魚たちを切りさばこうとしたその時・・・!!


「え・・・!!まるで刀のような・・・」

それは、今までに見たこともない、長い長い包丁ではありませんか。
そして、お魚を、手際良く丁寧に切りさばき、その刀は、そのご婦人と殿方の前に、ドンっと置かれます。
私は、その刀が、いや長い包丁が気になって仕方ありませんでした。
その板前さんというか、職人さんの気がふれないことを祈ります・・・。


さて、それはさておき、その時に食べたものは、
子肌、しめサバ、赤貝、きすの昆布じめ、煮タコ、マグロのづけ、以上切り身。
かんぴょう、あなきゅう、以上巻き寿。
あさりの味噌汁、最後に玉子焼き。

その美味たるや、お勘定、〆て天文学的数字。

K.maki-co 2013,2.10 



第七話 「袖擦り合うも多生の縁」


もう季節も過ぎてしまった昨年のネタで恐縮ですが・・・

残暑の続く9月のこと。銀座のど真ん中にある公立の小学校の前のお洒落なオープンカフェでの出来事です。
そのお店は、いつ来てもお客様が多く、人気のあるカフェレストランです。パン屋さんが併設されているので、パンをそのままイートインできて、さらに野菜が好きな私には、サラダもボリュームがあって、それが気に入り、度々来るようになりました。ただ、隣の席との間隔が狭いのが難点なのです。

たまたまその日は、あとから、隣のテーブルに来た若い女性二人が、席に着こうとした時、通るのに狭そうだったので、私たちは、自分たちのテーブルを持ち上げて横にずらしました。
そうしたら、その女性は、お尻をこちらに向けて通りました。

二人は、昼間から大きなジョッキのビールをぐいぐいっと飲みほし、少ししたら、早々と席を立ちました。また私たちは、テーブルを持ち上げて横にずらしました。
また、その女性は、お尻をこちらに向けて、何も言わずに通りました。

彼はその時、顔を曇らせて「袖擦り合うも多生の縁だよね~」と言いました。

私の電子辞書のことわざ辞典によると、その意味は・・・
「袖が触れ合うようなちょっとしたことも、前世からの深い因縁によって起こるもの」とありました。



さて、場面は変わり、こちらは新宿の有名デパート横の老舗の珈琲舎。
狭いキッチンで作り出すいろいろなトースト類。特にミックスサンドイッチの手際の良さ、出来立てのサンドイッチをパクパクと食べる嬉しさ。毎日のように通っておりました。その狭いキッチン内での出来事です。
昔から不思議に思っていたことがあります。

スタッフのネームカードがついている人と、ついていない人がいることに気がつきました。
「本部」と書いてある人は、本社からの正社員さん2名。その他の人は、書いていないのでアルバイトの人?と、思っていたのですが・・・

数年たったある日のこと、
「吉田」というネームカードの人が現れました。
「あれ?あれはもしかしたら
本部→ホンブ
本部→モトベ
なのかな?」

一人は、初老の男性。そして、もう一人は若い女性・・・・ひょっとしたら親子なのかな・・・?
店に行く度に名札の謎は、ますます深まっていきました。


そんなある日のこと、

「おっ!!あれは親子だ~~!!」

狭いキッチンを重ねて通る、その姿。
お腹と背中を密着しながら、狭いキッチンをすりぬけているではありませんか!!

これはまさに親子の距離です。


「袖擦り合うも多生の縁、腹擦り合うも親子の縁・・・・・」


お後がよろしいようで。

Maki-co 2013,1.27



第六話 「一富士 二鷹 三茄子」


「一富士 二鷹 三茄子」 これは、初夢に見ると縁起が良いという、古くからの言い伝え。
1月1日から3日までに見る夢を初夢と言いますよね。

ところで、私はこんなに小さな体ですが、思いのほか大きな?夢があります。

一つ目の夢は、「所沢ハウス」を作ること
二つ目の夢は、「所沢ハウス」を作ること
三 四がなくて
五つ目の夢も、「所沢ハウス」を作ること


要するに、所沢に小さな自分の家を作るというのが、私の大きな夢です。
では、「所沢ハウス」とは、どうゆう家なのか、どのような夢なのか、今日はそのお話をいたしましょう。


「所沢ハウス」、それは、私の自宅と両親の居宅を兼ねた、そして小さなコンサートができる延床50坪の小さなお家です。

私は、アルパを始めて14年以上がたちましたが、アルパの特性と自分のテイストを最大限伝える環境を模索してきました。
そして、気がついた事は、大規模なコンサートホールで演奏をするより、小規模なコンサート、例えばホームコンサートや小さな会合での演奏のほうが、よりお客様に想いが伝わることが分かりました。

また、今は、各方面に出張で演奏に出かけていますが、アルパをかついでの移動は、10年後、20年後の自分を考えると、体力的にも厳しくなると思います。大好きなアルパを私がおばあちゃんになっても弾いていくために、自分の手元にホームベースを作ること、そして常に自分の身の丈の活動の中で、自由にコンサートの自前化ができるような場所があったら素敵だなぁと考えるようになりました。

そして私は今、農家を回るオーガニックコンサートも展開していますので、将来、各地方から届く新鮮な野菜や果物を調理したり、お土産にしたり・・・そんな素敵なオーガニックなお食事と私のアルパの音楽とのコラボレーションのコンサートのスタイルを作ることができたらと考えています。
(お料理は、只今猛練習中!)

また私は今、手作りでCDを制作していますので、定年退職した両親にも手伝ってもらいながら、いつまでも仲良く暮らしていけたら幸せです。

この優しい音色アルパと、素敵なお客様と、そして楽しい仲間たちに囲まれながら、できるだけ長く音楽活動が展開できれば嬉しいです。

そんな素敵な宝箱のようなお家を作ること、それが、所沢ハウスでーす!!

しかし、その夢の実現には、建設資金が・・・
年末ジャンボ当たらないかなぁ・・・と、秘かに年末に、ドキドキしながら、宝くじを買ってしまいました。

そして、当選結果は・・・・・桜散る


やはり、本当の夢の実現には、他力本願でなく、自力で・・・

それに向けて、1stアルバム「ミ アルパ」と2ndアルバム「カンタス」を進化させながら、手作り、手売りで、売上枚数一万枚を目標に「気合い」と「精進」の心で、頑張ります!!

Maki-co 2013.1.4




第五話 「光もの好き」


光ものと言えば、こはだ、さば、あじ・・・これは寿司ネタ。
今回の光もののお話は、決して食べ物ではありません。

実は私、街中を歩いていて、エレベーターの鏡面仕上げのステンレスとか、電車の中の自分が映るガラス窓とか、喫茶店の中のスプーンとか・・・
要するに、光っているものを見つけると、自分の顔を鏡代わりに映してしまいます。

私は、天然のくせっ毛で、特に、湿気が多い時は、前髪がくるんっとはねてしまいます。
その前髪のくるくるが大きなコンプレックスでした。ですから、その前髪を必死で手で直そうとしていたのでした。そして、そのお顔は、くるんっとはねているコンプレックスの塊に集中しているので、我を忘れて目が凝視、おまけに口が半びらきの状況でございます。

ある時、一緒に歩いている彼に、そんな姿を見られ、
「変な顔をしているよ。」っと、言われてしまいました。

そして、事情を話すと、
「そのくるんとした前髪は、君のチャームポイントなんだから、そのままでいいんだよ。」
っと、言ってくれました。


そして、ある日のこと・・・

「ザ アーティスト」というロードショー映画を、彼の勧めで、リハーサルとの時間の合間に有楽町の映画館にひとりで観にいきました。
その映画は、古き良き時代の無声映画、サイレントというのでしょうか?を現代のハリウッド映画がリメイクした、第84回米アカデミー賞5部門受賞作品だったのです。
私は知りませんでした。

主演男優ジャン・デュジャルダンが演じる、大スター・ジョージのアイデアで、主役女優ベレニス・ベジョが演じるペピー扮する女優のたまごに、個性を出させるため、つけぼくろをつけてあげる・・・。
っというものでした。
そして、それがチャームポイントになり、一躍有名になっていく・・・
そんな筋書きの映画です。


私は、その映画を観てからは、私の前髪も、他の人にはないチャームポイントだと、すっかり思えるようになり、光ものを見ても気にせず、ちゃっかり銀幕の大スター気どりで、街を歩くようになりました。


さて、本日の光ものは、「こはだ、あじ」
そして、話のしめで、「しめさば」といたしましょう。

お後がよろしいようで・・・

Maki-co 2012.12.16

お気に入りの屋根裏のカフェにて



第四話 「ご想像にお任せします」


私のホームページは、本人が思う以上に、皆さんから良く見られているようです。
新企画の「アルパ三十六弦」も意外に見られている気がしてきました。
今、お読みのあなたもその一人ですよね。ありがとうございます!

私が歌っているのは、ラブソング♪・・・。
アルパ三十六弦に登場する謎の人物・・・。

そんな事ですから、多少なりとも、私の人間関係についての「興味」と「関心」のお言葉が、私の手元に届くことがあります。

今日は、そんなお話です。


先月、コンサートが終わった後のお客様とのちょっとした時間に、こんな質問がありました。
「アルパ三十六弦をいつも見ていますよ。」
「ありがとうございます。」・・・と私。
「主人との最近の話題ですが、彼氏がいるのかなぁ?いないのかなぁ??・・・
‘そんな事なら今度、いっそ本人に聞いてごらんよ’って主人が言うんです。
実際はどうなの??」

「きたきたきた~!!」・・・と心の中で私。
突然の核心的な質問に私の頭はフル回転!!
お顔は笑顔のまま、頭の中は、想定解答でいっぱいになりました。

①はっきり「いない」と言う
②いても「いない」と言う
③いなくても「いる」と言う
④はっきり「いる」と言う
⑤ウニャウニャ言って「ごまかす」


さて、こんな答えが瞬時によぎりました。
その時、私は、③と④のカテゴリ-
要するに「いる」の解答を決意。
「おかげさまで、おります」・・・と私。

ここで私の自論ですが、何事も全てが見えていないほうが、はっきり分からないほうが、より想像力が発揮できて、クリエイティブな人間関係ができると思っております。
そんな具合ですから、ここではっきり先日の上品なご婦人に対する答えを訂正し、再度答えを述べさせていただきます。

問い 「実際はどうなの?良い人がいるの??」

答え きっぱりと、 「ご想像にお任せします。」・・・これが正解。

Maki-co 2012.12.9



第三話 「電子辞書の使い方」


きょうび、道具はいろいろ進化していますね。
例えば辞書。電子辞書がでてきていますね。
小さなワープロのようなものを取り出して、調べたいことを入力し、検索をする。
英訳、仏訳、なんでもござれと、出てくる魔法の小箱。

最新鋭のスマートフォンを手に入れれば、あらゆるものの知識をアプリし、電話が高性能の辞書になったりします。
私は、スマートフォンは持っていませんので、小さな電子辞書を3年前から使っています。
っというよりも、「調べものには、電子辞書がありますよ」っと、彼からの贈り物でした。
もらった時は嬉しくて、嬉しくて、自分の頭が良くなったような気がして、何でも調べて
「あ~なるほど!」っと納得。
そして3日、30日、3年過ぎ・・・


「何でも俺に聞くんじゃないよ。辞書があるだろう?」
っと、何回か怒られたことがありました。

彼とのデートの持ち物を整理しているある朝、
いつも電子辞書は持ち歩いていましたが、なるべく身軽にしたいと思い、カバンから辞書を取り出して、玄関先に置きました。しかし、また小言を言われるので、重いのですが、カバンの中にしたためました。

そして、いつものカフェで楽しくお話している時のことです。

毎度の事ですが、彼の言葉で分からないことがでてきて、彼にその意味を聞きました。
すると彼は、
「そんなものは、辞書でひけばいいじゃん」

「きたきた~!その通り!ほ~れ!」
っと、心の中で私はつぶやき、おもむろに電子辞書をカバンの中から取り出し、見せつけるように、誇らしげに使いました。

考えてみると、私の電子辞書の使い方は、この程度の事でございます。

結局、肝心な彼の言葉は、検索不能が多く、結局、彼が、直接説明してくれるのでした。
でも、この電子辞書のおかげで、笑いがたえません。


あ、でも次のデートの時には、やっぱり重いから置いていこうかな・・・。

Maki-co 2012.11.15


 



第二話 「お喉が痛い」

昨日、小さなコンサートがありました。とても良い雰囲気の住宅街の喫茶店。
11名程のお客様。

私には、めずらしく、殿方が7名、女性が4名のお客様。
この空間ならば、PA(マイク)がなくても1曲くらいなら歌えるかもっと、思い「11.3.11」を歌いました。おかげさまで、とても好評で、私もとてもHAPPYな気分で、その日を終えることができました。

ところが、翌朝、
「あら、お喉が痛い」

PAをいれずに、歌った結果だと思います。
ついついがんばって、喉に炎症がおきたのでしょう。
PAを入れずに歌うと、翌朝決まって
「あら、お喉が痛い」
何回、そんな事を繰り返したでしょうか・・・

今日は久しぶりのオフ!
秋晴れの秋分の日。銀座のカフェ。パリ風のお店でシャンゼリゼランチをしていた時に、
彼に「お喉が痛い」っと言ったら、
「今日はしゃべらないでいいよ。身振り、手振りにいこうよ。」
っと、言ってくれたので、私はいい気になって、一言もしゃべらず、あごで彼を使うように、紅茶を入れさせ、パンを切らせ、指先一本で指示していました。

やがて、ふと彼の顔を見ると、
「おい、何様だと思っているんだ?」
っというような顔をしているではありませんか。

しかし、私は調子に乗って、さらにあごでつかうような真似をしました。
すると、彼は、むっくり立ち上がり
気を悪くして、帰ろうとしているではありませんか。

私はその時、思わず大声で
「怒っちゃったの~?」
っと叫びました。

「あ~お喉が痛い・・・」




第一話 「虎やの夏 茶寮混雑 順番待ち」

『こんな時間でも混んでいるんだ~』 などと言い、4時の待ち合わせなのに、いつものように少し遅れてしまった。口からでまかせ、思いつきの、これもいつものように言い訳のようなセリフを
ブツブツ言いながら・・・私は彼のもとに近寄り、麦わら帽子を取った。

『ラストオーダーの時間がすぎてしまっているけど、大丈夫なのかな~』
私は、きょろきょろと店内を見渡した。

‘僕は、そんなことはお見通し…だから早めに来て並んでいるのになぁ。この子はそんなことも知らずに、いつものように少し遅れて・・・ ’

彼とのつきあいも気がつけば長くなっている。でも初めから待ち合わせは、いつも彼が先に来てしまって、いつしか私が少しでも先に来て、本でも涼やかな顔で読んでいたりして・・・大人の待ち合わせ・・・♪ っと、そんな事を考えていたら、

『おい、氷が溶けちゃうぞ!』
と、目の前に、宇治金時の練乳がけ、白玉トッピングのいつもの私たちの夏の虎やの風物詩が、とろっと溶け出していた
・・・虎やの夏 。

Maki-co 2012.8.22